ソラコムの米国CEO川本雄人氏が語る、グローバル展開とシアトル(前編)

今回は特別編です!普段は主に「シアトルのスタートアップ」を扱っているのですが、本日は「シアトルに進出する日本のスタートアップ」に迫ります。

みなさんは、日本発のグローバルなIoTプラットフォームの構築を目指すスタートアップ「ソラコム」をご存知でしょうか?昨年の8月にKDDIに買収され、今後はグローバル展開を積極的に進めていくということで、ニュースで大きく取り上げられていましたよね!

今回はあるご縁で、ソラコムの米国CEOを務める川本雄人氏にお話を伺うことができました!なんと、私(りょう)が働いているコワーキングスペースの同じフロアに、ソラコムのシアトルオフィスが入っていたのです。

「これは絶好のチャンスだ!」ということで、図々しくもオフィスに直接押しかけ、インタビューの打診をしたところ、川本さんが快くインタビューに応じてくださりました。

ということで、ソラコムの海外展開とシアトルの役割について、そして川本さん自身のキャリアを中心にお話を伺いました!

新卒で日本IBMに入社。カリフォルニア大学バークレー校でMBAを取得後、独立系金融機関、AWS Japan、AWSシアトル本社で活躍。2018年1月にソラコムに参画。

AWSから着想を得た、日本発のグローバルなITプラットフォーム

-本日は貴重なお時間ありがとうございます。こういったインタビューは頻繁に受けられるのですか?

そうですね。Amazon Web Services(以下、AWS)の時に複数回受けていました。今の会社(ソラコム)では、PR活動を意識的に増やしていこうと思っています。最近だと、この前日本でASCIIさんから取材を受けました。

-そうなんですね!僕たちみたいな新興メディアの取材を受けていただき、嬉しい限りです。それでは早速、まずはソラコムについて簡単に教えていただけますか?

ソラコムのビジネスを理解するには、まずAWSの仕組みを説明するのがいいと思います。AWSが登場する以前は、各企業が多額の初期費用を投資して、サーバーを運用する必要がありました。そのサーバーのキャパシティ―を使い切れるかどうかが、わからないにもかかわらずです。

一方で、AWSを使用した場合、自分たちが使用した分だけ料金を支払えばいい。この仕組みがスタートアップ層やデベロッパー層に評価され、AWSは急速に広がっていきました。特に、スタートアップ層にとっては、この仕組みがスモールスタートの実現に適していたのです。

-かなり革新的ですね。

実はIoTの分野でも、同じようなことが起きています。IoTデバイスのデータを処理するためには、クラウドに繋げる必要があります。

エッジ側(デバイス側)でデータ処理を行うという方法もありますが、コンピューティングリソースはクラウドがメインなので、クラウド側で処理をしたいという需要の方が多いです。

そこで、どうやってクラウドに繋げるのかということが問題になっています。通常は通信事業者(日本で言うとNTTドコモやKDDI、米国でいうとAT&Tやベライゾンなど)と回線を契約し、初期費用を支払い、使用するデータ量を決め、複数年にわたる契約を結びます。

このモデルは、多額の投資が可能な大企業には向いていますが、それが難しいスタートアップには向いていません。ネットワークもAWSと同様に、使用した分に応じて支払いができればいいのではないか。このアイデアをベースにIoTプラットフォームSORACOMを提供開始しました。

AWSがサーバーの世界で新たなイノベーションを起こしたように、SORACOMはIoT、ネットワークやコネクティビティの世界でイノベーションを起こしたいと考えています。

AWSのモデルをネットワークの世界に応用したということですね。

その通りです。ソラコムの創業者は3人いるのですが、そのうちの2人が私の元同僚で、AWS Japanの立ち上げを一緒に行なった、玉川憲(同社CEO)と安川健太(同社CTO)です。

玉川とは、日本IBM時代からの同僚で、彼と一緒にAWS Japanの初期の立ち上げを行いました。安川は、ソリューションアーキテクチャというエンジニア部隊にいて、後にシアトルでDynamoDBと言うデータベースサービスを一緒に担当していました。

AWS出身のメンバーが多いんですね。もう少し詳しく、ソラコムのすごい点に関して教えていただけますか?

ソラコムのすごい点は、優れたビジネスモデルと、そのビジネスモデルを実現可能にした方法です。

ご存知の通り、日本において、回線はNTTドコモやKDDI、ソフトバンクといった通信キャリアが提供しています。実はそのほかにも、MVNO(Mobile Virtual Network Operator)という考え方があります。MVNOとは、通信キャリアから卸価格で回線を借りて、付加価値を付けてエンドのお客様に売るというものです。

日本だと楽天さんがMVNOに参入しようとしていますが、日本ではまだまだ少ないです。一方で、ヨーロッパでは一般的なモデルです。

このMVNOのオペレーションにはすごくお金がかかります。コアネットワークと呼ばれるものを導入するために、通信機器ベンダーから機器を購入し、多額の初期費用を投資しなければなりません。一般的には、MVNOを始めるには数十億円必要と言われています。

SORACOMは、このコアネットワークの部分をハードウェアからソフトウェアにし、クラウド上に実装したという点が特徴です。ここが強みであると言えます。

クラウド上に実装したということは、クラウドと全く同じモデルで運用することができます。すなわち、使った分に応じて料金を支払うモデル、需要に応じてキャパシティーの増減が可能になります。

SORACOMの仕組み(ソラコムHPより引用)

-SORACOMの優位性はその技術力に裏付けされているのですね。現在は、どのくらいの会社がSORACOMのサービスを活用しているのですか?

サービスが始まって24ヶ月ちょっとですが、世界中で約9000ユーザーに使っていただいています。日本で約7000、海外で約2000ユーザーという感じです。日本でサービスを開始したので、現在は日本のお客様が多いという状況ですね。

しかし、昨年の8月にKDDIの子会社化したことを機に、今後は本格的に海外事業に投資していこうとしています。

実は2016年の末から海外展開は進めていたのですが、KDDIの資本が入ったことをきっかけに、海外、特に米国の投資をさらに加速させていこうとしており、私が米国事業の責任者として事業を立ち上げている段階です。

そもそもソラコムがサービスを始めた理由は、日本だけではなく世界で通用するグローバルなプラットフォームを作りたかったからです。ですので、最初から「Go Global」はどこかのタイミングでやっていこうと考えていました。

-「世界で通用するプラットフォーム」がソラコムの目指すものなのですね。世界で通用するために、特に力を入れていることはありますか?

グローバルプラットフォームを実現するために意識していることは2点あります。

1点目は、グローバルに向けた汎用的なサービスを提供するということです。日本の企業では、日本の市場に向けたサービスを出すことがほとんどなのですが、それはグローバルで見てみると必要でないということが多くあります。一方ソラコムでは、プラットフォームという言葉の通り、どこの国でも使える同じサービスを開発し、提供しています。

2点目は、ソラコムのカルチャーにフィットする人材を採用するということです。例えば、米国のオフィスにおいても、技術的な面に合わせて米国のマーケットを理解していれば採用するというのではなく、それに加えて、ソラコムのカルチャーに合った人材のみを採用するようにしています。そうすることで、世界中のどこのオフィスでも統一性のある人材が採用できるようになっています。

スタートアップから拡大していくサービスの需要

-海外の顧客の2000ユーザーのほとんどはアメリカの会社ですか?

アメリカとヨーロッパがほとんどです。ヨーロッパにも実はオフィスを設けていて、色々なお客様が出始めています。例えば、アメリカでいうとOpendoorという企業がお客様のうちの一社です。Opendoorは、不動産売買の効率化を実現しているスタートアップで次世代ユニコーンとして注目を集めています。

これまでの不動産取引では、エージェントに対して一般的に数%を払って家を売るのが当たり前でした。しかし、Opendoorは仲介料無しで家を買い取ってくれます。彼らは家を転売する際に、さらにエージェントを介さずに売る仕組みを作りました。

家を売り買いする時には、購入したい家に行って内見する必要がありますよね。しかし、Opendoorの取引には家の案内をするエージェントは存在しません。そこで、Opendoorはスマートロックをつけて、お客さんがスマホで家の鍵を開け閉めできるようにしました。

そのスマートロックの通信部分でSORACOMプラットフォームを使ってもらっています。AWSのモデルとすごく似ていて、スタートアップがすぐに価値を理解して使ってくれるおかげで、サービスが広がっています。

ソラコムのプラットフォームが使われているOpendoor社のスマートロック

SORACOMのプラットフォームが使われているOpendoor社のアプリ

-スタートアップから広まっていくというのはすごく面白いですね。これまでのお話を聞く限り、ソラコムのビジネスはかなりユニークだと感じますが、現時点で競合はいるのですか?

実は明確に競合と言える競合はいないんです。大手通信キャリア、例えばAT&Tやベライゾンのような会社が我々の競合になるかというと、対象としているマーケットが違うので、競合というと少し大げさに感じます。

彼らは大型の顧客に対して、大量の回線をまとめて売るというモデル。ソラコムではクラウド上に構築されたMVNOと言う強みを活かして、デバイスとプライベートネットワーク接続を可能にするSORACOM CanalやSORACOM Door、データ転送支援や、クラウド連携を実現するSORACOM BeamやSORACOM Funnelと言ったバリューアッドサービスを中心にサービスを展開しています。

SORACOMサービスは、通信とクラウドを融合したIoTに特化したサービス。今のところ同じようなアプローチで、お客様に通信をコントローラブルに提供している会社は他にありません。私たちがやるべきことをやって、お客様に喜んでいただくことが、IoT通信の世界においてトップランナーになるために必要だと考えています。

-対象のマーケットがデベロッパーやスタートアップということですが、その観点で見た時に、一番注目している国はどこですか?

やはり米国は圧倒的に裾野が広いと感じます。現在のお客さんの数でいうと、日本が圧倒的に大きいです。しかし、我々のサービスが響くであろう、デベロッパー層やスタートアップ層の裾野が広いのは圧倒的に米国です。

また、農業やモビリティなどエンタープライズの分野でも圧倒的に米国は裾野が広いです。そういった意味でも米国には大変期待しています。

一方で、中南米からも引きがあったりします。現時点で特にマーケティングしているわけではありません。おそらくコネクティビティのところで困っているのでしょう。

特に、農作物の栽培やその周りのセンサリングの部分で興味を持ってもらうことが多いと感じます。これからの部分ではあるので、じっくりとお客様と向き合っていきたいと考えています。

-なるほど、やはり米国が鍵になってきそうですね。IoTの導入に関しても、日本より米国の方が進んでいるのでしょうか?

進んでいると思います。なぜかというと、データに関する考え方の違いがあるからです。米国では、あらゆるデータをビジネスに結びつけようというのが自然な考え方です。

データに強い価値を感じており、この点において、日本と違いがあると言えます。データの取得のために、どうするべきかという意識が全く違います。

そこが、米国と日本との間のIoT導入のスピードの違いを生んでいるように感じますね。

-データに対する考え方の違いですか。興味深いですね。それでは、国ではなく業界という枠組みで見た時に、特に注目している分野はありますか?

現時点では、業界に関係なく幅広く見ています。私も驚いたのが、意外とWi-Fiが網羅している領域も自分たちのマーケットになりうるということです。

Wi-Fiがある場所では、我々が提供しているセルラー通信が必要ないかというと、そういうわけではないのです。例えばコネクテッドホームの分野でいうと、Wi-Fiがあるからセルラー通信は不要なように感じますが、意外と必要なのです。

アメリカのWi-Fiってよく切れて、そんなに通信接続がよくないですよね。実は、Wi-Fiが機能しなかった時のバックアップ回線としてセルラー通信の需要があるのです。

例えば、日本の東急ハンズではPOSレジのバックアップ回線にソラコムの通信を活用しています。メインの回線が機能しなかった場合に備えて、もう1つ回線を引こうとするとすごくコストがかかるんですよね。

それならば、SORACOMプラットフォームを使い、いざという時はセルラー通信に接続するという使い方があります。こう考えると、用途は多種多様ですよね。

ソラコムの製品の一つである「カード型 SIM」。Amazonで購入できる。

-あくまで現時点での傾向でもいいので、どの業界での契約が多いかを教えていただけますか?笑

日本に関して言えば、本当に多種多様と言えます。物流、製造、農業、モバイルなど本当に様々です。アメリカに関していうと、まだ事業を始めて時間が経っておらず、確信を持って言えるわけではないですが、Opendoorのような不動産や住宅関連が多いように感じます。

スマートロックやスマートホームの回線として使われることが多いですね。直近で見えているところでいうとこんな感じです。

*次回に続く。




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