いまの自分から何か変わりたいと思っているけど、なかなか行動に移せない、何をしたらいいか分からないと思っている方は少なくないのではないでしょうか。
また、海外に出ても自分がどう活躍できるのか分からない、これからどうキャリアを積んでいけばいいのか分からない。そんな風に悩まれている方も多いと思います。
今回の記事では、ゲイツ財団で唯一の日本人として働く馬渕俊介さんが熱く語ってくださった、これからの人生や日本人として活躍することについてご紹介したいと思います。
前半記事はこちら
世界で日本人はどう活躍するか
日本人が得意な分野は、論理で説得していくことよりも相手の感情に寄り添っていく、寝技スタイル。
欧米圏ではスーパーマンがリーダーになって周りを引っ張っていくパワー型のリーダーが多いけど、世界中で同じリーダーシップが求められている訳ではないんです。特に途上国で一緒に働くことが多いアフリカやアジアの人たちは、日本人のメンタリティと似ている人が多いと感じます。
そういった人たちと交渉をしたり、チームになって働くときには日本的な気遣いや考え方はとても役立ちます。また、アメリカ的な考えが中心の組織で平和をもたらす存在になったり、チーム内の些細なトラブルを解決するといった、サーバント・リーダーになって組織を支えていくのに効果的なコミュニケーションスタイルだと思います。
そうですね。他人の意見を聞いて受け止める能力、という土台があると、自分が組織を束ねる立場になったときに全員の意見を集約して一つのものにしていくということが出来るようになると思います。
私も南アフリカで仕事をしたときにチームメンバーの意見を聞いて結論を出すという、普通のネイティブよりもさらに頭を回転させなければならないような経験を積んで英語でも徐々に出来るようになっていきました。この能力はずっと発展途上のものだと思います。
能力の使い分けが大事
ただ、どんな場面でも聞き役に徹すればいいというわけではありません。スタンスを取らなければいけないときは、自分の意見をはっきり主張して場を引っ張っていく。
この二つの面を使い分けられるようになっていくことが大切です。日本人はこの2つをうまく両立出来ている人が少ないから国際的な場で小さくなってしまうことが多いのかなと思います。自分のスタンスをしっかりとるという能力を早めに身に付けておけば元々得意な方とうまく合わせていけると思います。
国際開発の場での寝技スタイル
相手の気持ちを汲み取れることも、スタンスをとって場を引っ張っていくことも、どちらも大切です。
国際開発の場でのコミュニケーションの基本は、色々な人の意見を聞きながら一緒に問題を解決していくこと。何通りもある問題解決のプロセスを考えていくときに全部自分の考えでやってしまうのではなく、時間をかけてでも周りの人を巻き込み、色々な意見を踏まえながら答えを出していく方がチームメンバー全員で納得し行動への活力も備えた、より強力な答えが出来上がると思います。
もちろん基本的な問題解決のスキルは必要ですが、それを使いながらどう周囲の人と協力するかといった仕組みを作るのが日本人の寝技が得意な領域です。
環境が人を作る
海外に行くのは早いほうがいいと思いますが、一つの効率的なキャリアというのはないと思います。
ある分野をずっと研究している人はその分野のトラディショナルなことのプロフェッショナルで、そういった人はたくさんいます。その中の一人になることも素晴らしいことですが、色々な経験を積んでいればそれが統合されたときに、気づいたらとても器の大きい人になっている。
その方が人生の道のりも面白いし、後から使える経験の引き出しが多いです。
世界も変わっていっている
昔は専門知識をとことん重視する機関や組織が多かったですが、最近その流れも変わってきています。
ゲイツ財団もある分野の専門家だけでなく、経営コンサルティングやIT企業など、様々な分野から来た人たちで構成されています。そういう環境からのほうがクリエイティブな案が出やすいですね。一つの道と決めてしまわずに、そのとき自分が面白いと思ったもの、自分が伸ばせると思ったことにどんどんチャレンジしていくのがいいと思います。
環境が人を作ると言うように、チャレンジしたいと思っている人がストレッチのある環境にいるとどんどん伸びしろが変わっていきます。今だから出来ることで人生の幅を広げられることはどんどんやった方がいいです。
人生は思ったよりはるかに短いし、若い頃出来ても年を取ると出来なくなることはたくさんあります。私も家庭が出来て、もうバックパッカーとかは出来ません(笑)
人に助けてもらえる人になる
そうですね(笑)すごく忙しいときは100人ぐらいのチームで3カ国をサポートするエボラ出血熱緊急対策のリードをやり、博士号をとり、子どもも3人生まれるという時がありました。もうどうやってやったのか自分でも分からないです(笑)でも特にコツとかはないですね。
夢を追う人
一つ言えることは、人に助けてもらえる人になれるといいですよね。本当に助かるし、それが楽しいです。
マッキンゼーの頃も博士号を目指している頃も、これまでいろんな場面でピンチな時は大抵メンターのような人に色々なアドバイスをもらって、その先が見えてきたりしてきました。
いま逆の立場になって私が若い人を助けるとき、やっぱり助けたいと思える人はやりたい夢が大きくてそれに対してひたむきで、自分の中で結果を出していくことが出来て、とても謙虚な自分が色々な人の助けを受けていることを分かっている人ですね。そういう人は自然といろんな人に助けてもらえるようになると思います。
最大のリスクは現状のままでいること
やっぱり何かやってみた経験など、きっかけがないとなかなか腰は上がらないですよね。
もう少し大きな世界を見たり、他の会社の面白いことを知るなり、もっと簡単にできるようになったらいいような気はしますね。ハングリー精神があるとよりいいと思いますね。
“リスク”とは
前に聞かれた質問で驚いたのが、どうしてそんなにリスクが取れるんですか、というものなんですが、リスクの考え方ですね。自分の短い人生でどう生きたいか、何をしたいか考えた時に、現状のままでいるリスクってすごい大きいじゃないですか。そういう風に考えられるかどうかがその先の行動力を分けると思います。
でも全員がそう考えられる訳ではないから、そう考えられるようになる経験なりなんらかのきっかけがあるといいんじゃないですかね。アグレッシブに自分の道を作っていくのが大切だと思います。
調和に満ちたオーケストラに導く
学問的な勉強じゃなくて経験ですね。
リーダーシップにはチーム内のそれぞれの人を理解して、個々人がベストを出せるのはどんな状況なのか考えてチームを作ったり運営していくことが必要です。いろんなカルチャーを持つ人がチームにいるとすごく楽しい。それぞれに違うアイデアがどんどん出てくるし、それをちゃんと引き出して、きちんと方向を決めるときは決めるというのをバランスよく采配していくことが私のリーダーシップの取り方ですかね。
でも意見を聞いてるだけじゃ意見が拡散して終わって、何も出来なかったとなってしまうから、色々な意見をまとめて解決まで導いていくのはやっぱり問題解決力。それは色々なことをたくさん経験して失敗しつつ身に付けるしかないですね。
経験を身に付ける人生
色々なことを自然に聞ける能力というのはやっぱり、たくさんの国に旅行して様々な人と仲良くなっていろんな人の考え方の違いが分かることなどを積み重ねて分かっていくものだから、議論をまとめられるスキルと異なった価値観を尊敬できる経験がつくような人生の送り方をすれば身についていくんでしょうね。
一つのことを鍛えきってから違うスキルを身に付けようとしてもなかなか身につかなかったりするから、面白い人っていうのはそういうバランスを自然と取ってきた人でしょうね。
そうやってそれぞれの人のいいところを見極めながらチームを運営していくと、オーケストラが調和に導かれて素晴らしい音楽ができるようにまとまって、すごく楽しいですよ。
まとめ
今回馬渕さんのお話を聞けたことで、私自身の考えもすごく広がりました。
まだまだこれから残りの留学生活や今後の就職活動でどんなことをすればいいのか分からない、自分の軸が分からない、そんな風に悩むときは多くあると思います。そんなときは馬渕さんの「自分の人生を考えるとき現状のままでいるリスクはすごく大きい」というお言葉をひとつ自分の指標にして、自分の人生をどうしていきたいのか、そのために何をしていかなければならないのか、客観的に見つめ直すことで答えを探していきたいと思えるようになりました。
この記事を見てくださっている中にも自分の軸、自分のやりたいことが分からないことが一つの悩みになっている方は多くいらっしゃると思います。自己分析などを通してこれまでの自分を振り返るとともに、自分の未来や夢にもしっかりと焦点をあててそのために自分はこれからどうしていかなければならないのか、ということも頭に留めておいていただければ、自分が夢のために次いなければいけない場、と言うのが自ずと見えてくるのではないかと思いました。
【執筆者情報】小西悠夏
関西学院大学教育学部4年生。1年休学してシアトルBellevue Collegeに留学中。最近自炊を始め、安くておいしいパスタソースを探し求めている。