アメリカ・シリコンバレーで約20年間もの就業経験を持つ金子厚志さんが語る「海外で働く」とは?【第2弾】

金子厚志さんインタビュー編第2弾!

第1弾はこちらです。

アメリカ・シリコンバレーで約20年間もの就業経験を持つ金子厚志さんが語る「海外で働く」とは?【第1弾】

今回は「海外で働くこと」についてより深く掘り下げていきます。

海外で働くということ

金子さんが思う、海外で働くことのメリットとデメリットはなんですか

まず、海外で働くということは「一つの文化から抜け出す」ということです。何かをする際の手順や決まりごとのことをプロトコルというのですが、文化とは一つのプロトコルから成り立っており、そのプロトコルから抜け出すことを意味します。日本という一つのプロトコルを出て違うプロトコルを経験し二つのプロトコルを知ると、形式や文化ではない人間の共通の部分が見えてきます。これが人間の本質です。

日本はプロトコルが完全に出来上がっていて、これまでは個人が自分の価値観を殺して(プロトコルに合わせることで)社会的に上手くいっていたんです。でも、人間の本質としては個々の価値観を殺すべきではない。海外に出ると、自分の価値観を全うしながらやりたいことができる可能性は非常に高いですね。他の人たちも、ある一つのプロトコルから外れていることが普通なので違う価値観に対しての理解度が高い、それは人生の中でのメリットでもあると思います。

ただその代わり、自分のやりたいことをやって失敗したら自分の責任だし、日本のようにプロトコルに従ってさえいれば誰か助けてくれる、というわけにはいかないですね。

日本人としてのアイデンティティ

海外で働く上で日本人として大切にしているアイデンティティはなんですか?

すごく月並みな話になってしまうんですけど、日本人の「サムライ精神」みたいなもの、定義によって違うので言葉にするのが難しいですが・・・自分のコワーカーや友達を大切にするというか。違う国の文化を持っている人って、辛いと結構人に押し付けちゃうところがあるんですよね。別にそれが悪いわけじゃなくて単にそういう価値観なだけなんですけど、日本人は自分がきつくてもあまり人に見せない、そう言ったサムライの「美」みたいなものは好きですね。

インタビュー時の写真②

学生が今すべきことは?

海外で働きたいと思っている日本の学生が今一番すべきことってなんだと思いますか?

一つは、日本は世界の一部だと考えるのが大切だということ。日本か海外かと二項対立で考えるのではなくて、世界全体をしっかり見る必要があります。

もう一つは「関係性IQ」を高めることですね。関係性IQとは人の感情を読み取るIQ(つまりEQ)を基本とした自分と相手との関係性が理解できる知能のことです。昔は一つの問題に対して既にある答えの選択肢をたくさん持っている人が優秀だったんですが、今の時代は一つの問題に対して答えがないので、自分で答えを出さなければいけない。そのために関係性IQというものが必要になってきます。
例えば、挨拶の本当の意味っていうのは「私はあなたに危害を加えません」ってことを伝えるためなんですが、普段挨拶するとき何も意識せずにただお辞儀するじゃないですか。ところが外に出るとそういったプロトコルがない中で、その人の感情を読み取って、私は安全な人だということを何かで告げなきゃいけない。それを考える関係性IQが高くないとグローバルでは通用しません。
しかし一つのプロトコルにいると関係性IQっていうのは退化していってしまうので、それを上げていくために違うプロトコルを持つ人となるべく接して関係性IQのスキルをつけていく必要はありますね。
そうすると就活そのものも変わってきて、日本の一つのプロトコルの中の就活じゃなくてもっと大きな意味での就活ができると思います。

日系企業に必要な「OS」

海外に進出しようとする日系企業の中で、例えばサンフランシスコのような場所で成功する企業とこれ難しそうだなって企業との違いはありますか?

自分の中のOSの部分をちゃんと持っているかどうかですね。コンピューターでいうとアプリケーション(WordやExcel)の部分とOS(WindowsやMacのOS)の部分ってあるじゃないですか。ほとんどの日系企業って人材育成する時に、アプリケーションの部分、つまりどれだけ専門性を高めるかということばかり考えがちなんですけど、実はグローバルの世界だと、専門性よりもOSの部分が高い人の方が成功するんですよね。専門性ももちろん必要なんですが、OSがクラッシュしてたらいくら専門性を持ってたって役に立たないんです。それでそのOSの部分の一番大きなものが「ビジョン」で、自分の価値観を元にまずビジョンを作り出すことが重要になります。

学生向けのキャリアイベントの様子

さいごに

最後に、「海外に行きたいという気持ちはあるけどなかなか一歩が出ない人」へ向けてのメッセージをお願いします。

たぶん一歩が出ないのは考えすぎてるからじゃないかな。行ったらどうなっちゃうかとか。まず僕としては「もうどうでもいいから一歩を踏み出す」のがいいんじゃないかと思います。ソフトウェアの開発に例えると、昔はゴール(最終形)が見えないと始めないウォーターフォール(Waterfall model)開発だったのですが、今は先が見えなくてもとりあえず行けるところまで行ってみようっていうアジャイル(Agile model)開発の状態なので、とりあえずやってみてダメだったら帰って来て方向転換や改良すればいいっていうそのアジャイル方式を使っていけばいいんじゃないですかね。

まとめ

普段聞き慣れない言葉やコンピューターを使った例えなどもあり、かなり盛りだくさんのインタビューとなりました。日本か海外かじゃなくもっと広い視点から世界を見ることが大切なんですね。金子さん、どうもありがとうございました!

この記事を読んで、海外で働くイメージが湧きましたか?

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【執筆者情報】

砂川綾香

沖縄県宮古島市生まれ。中央大学に進学し現在シアトルで留学中。地元を盛り上げるために教育の分野での活動もしているよ!

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