ソラコム米国CEO、川本雄人氏への突撃インタビュー。後編では、シアトルオフィスについてと川本さん自身のキャリアに迫ります。
シアトルはパートナー企業が多いエリア
-それでは、続いてシアトルオフィスについて詳しくお話を聞かせていただきたいです。現在シアトルのオフィスには何人の従業員がいるのですか?
私を含めて4名です。あと米国でいうと、ベイエリアにも3名います。これはあくまで現在の数であり、採用を進めている最中なので、どんどん増えていきます。
-米国内にベイエリアとシアトルでそれぞれ拠点がありますが、オフィスの機能は分かれているのですか?
オフィスの機能は分かれていません。なので、どちらが特定の役割を果たしているということはありません。どちらでも同様に採用活動を進めており、優秀な人材がいれば、場所にこだわらず採用するようにしています。
ただ、両拠点の特性は若干異なります。シアトルには、Amazon、Microsoft、T-Mobileなどの本社、Googleもクラウドビジネスの拠点があり、ソラコムのパートナー企業が多いエリアです。一方で、ベイエリアはデベロッパーやスタートアップ層が多く、潜在顧客が多いエリアと言えます。
理想的には、スタートアップのエコシステムやデベロッパーを見る人間がベイエリア、パートナー周りを見る人間がシアトルにいる方がうまく機能すると思いますが、現時点ではこだわっていません。
-シアトルではパートナー企業とのビジネスがほとんどで、スタートアップにアプローチしたりはしないのですか?
いえ、そんなことはありません。もちろん、します。シアトルもスタートアップのエコシステムがあり、スタートアップ卒業生のようなZillow、Redfin、Tableauなどの大きい企業もあるので、もちろん狙っていきたいと考えています。
-そうなんですね。シアトルでは具体的にどのようなスタートアップをターゲットにしているのですか?
基本的に私たちのサービスが必要なのは、コネクティビティの部分です。ですので、何でもかんでもターゲットになりうるわけではありません。やはりハードウェア系、ガジェット系のスタートアップと相性がいいですね。
一方で、Opendoorのように意外なところから需要が生まれたりもするので、とにかく幅広く網を張って見ていこうと考えています。
コネクティビティの部分で困っている会社が不意に顧客になりうることもあるので、デベロッパーのコミュニティにアプローチしておくことは非常に重要ですね。
-話が変わってしまうのですが、ベイエリアのオフィスでもシアトルと同様に、コワーキングスペースを使用しているのですか?
そうですね。ベイエリアにも拠点が2つあるのですが、サンフランシスコのオフィスは、シアトルと同様にWeWorkを使っています。もう1つのメンロパークのオフィスは、Spacesというコワーキングスペースを使用しています。
-ビジネスを進める上で、コワーキングスペースを使うことにはどんなメリットがあると感じますか?
何と言ってもインフラを準備しなくてもいいのが大きいですね。コーヒーも自分で準備する必要ないですし、ビールサーバーもあります笑。
オフィスも働きやすくていいところだと思います。実はアマゾンで働いていたところよりいいオフィスなので、文句はないです笑
あとは、立地がいいですね。これもコワーキングスペースのメリットだと感じます。このインタビューみたいに話をするにも、オフィスに来やすいですよね。
-全く同感です笑。コワーキングスペースの醍醐味の1つがネットワーキングだと思うのですが、これまででそのような機会はありましたか?
まだ着任して4週間しか経っていない上に、出張も多いので今のところはまだないですね。これからわかっていくのかなと思います。
一方で、ベイエリアの方では、同じコワーキングスペースの会社を紹介してもらったり、そこと協業したりということが時々あるそうです。
-今後シアトルでも増えていきそうですね!
後悔のないキャリアを送ることこそが、成功したキャリア
-ここからは、川本さん自身のキャリアについてお伺いしていきたいと思います。AWSの本社勤務という最高にクールな職を離れ、創業数年のソラコムに可能性を感じ、参画された理由を教えていただけますか?
もともと創業者のメンバーを知っていたため、一番重要な人の面に関しては「イケる」という確信がありました。技術的な面で見ても、コアネットワークの部分をAWS上に構築したというのが、いかに革新的であるかということがわかっていました。
間違いないなと感じたのは、サービス開始から24ヶ月という短期間で約9000ユーザーというお客様がついたという点です。ここで、自分の感覚が正しかったと感じました。最終的には、魅力的な人材、革新的なサービス、そしてマーケットでの高い需要の3点が揃っているという点で判断しましたね。
また、KDDIが高い金額で買収したという点においても、サービスが評価されているということを確信しました。もちろん、100%の確信ではなかったが可能性があるし、わからないからこそ面白いなと感じて、飛び込みましたね。
-川本さんは僕ら学生の目から見て、まさに華々しいキャリアを送っていると感じます。川本さん自身のキャリア選びの軸を教えていただけますか?
私はキャリアの選択肢を考える場合、特に重要視しているのが老後になって振り返って見て自分なりに「後悔のないキャリア」を選ぶようにしています。具体的にどのようなものかというと、「ワクワクした経験」「いろんなことにチャレンジした経験」「グローバルに活躍した経験」「それなりにお金を稼いだ経験」の4つが得られることです。
-その軸というのは、川本さんが新卒で1社目の会社に入る時点で確立していたものですか?それともキャリアを進める中で次第にわかっていったものですか?
なかなかいい質問ですね。最初の時点で感覚的にはわかっていました。しかし、それを軸にすべきかどうかは、その時点ではわかりませんでした。これに関しては、キャリアを進めていく中で感覚が確信に変わっていったというイメージです。
新卒で会社を選ぶ時って、「モバイル決済が今後絶対くるから、モバイル決済事業をやっている会社に入りたい!」という感じで、テクニカルな部分を軸として考えがちだと思うんです。
しかし、このパターンだとモバイル決済という技術自体がなくなってしまったときが怖いですよね。もちろん、「グローバル」などの大きなトレンドを軸にキャリアを考えるのはいいことだが、あまり小さな技術的トレンドを追いすぎるとブレて来ると思います。
だからこそ、「ワクワクした経験」などの大枠の価値観を軸にする方がいいように感じます。
-まさに僕たちは新卒の会社選びで悩んでいる最中なんですよね。
あまり理想的、典型的なキャリアを追う必要性はないと思います。例えば、私がMBAの取得した当時は、戦略コンサルや投資銀行に進むのが王道中の王道でした。テック業界に進む人もいましたが今ほどメインストリームではありませんでした。流行りの業界に進むこと自体は悪くはないが、全員にとってフィットするとは限らないですよね。
もちろんフィットするならばそれでもいいが、フィットしないのにそこに進むのは苦痛なだけです。
–MBAの話が出たので、それについてお聞きしたいです。MBAは数年間職を離れて、高い学費を払うということもあり、費用対効果があまり良くないという議論もあります。川本さん自身はどのように感じましたか?
個人的には費用対効果がめちゃくちゃ良かったと感じます。ただ、全員にとってそうかというと、それはわかりません。国内でずっと働いていて、海外にMBAを取りに行くことに関しては、大賛成です。というのも、大前研一さんの言葉ですが、自分を変化させるには3つの方法しかなくて、海外のMBA取得はそれに適しているからです。
その3つは、住む場所を変えること、付き合う人を変えること、仕事を変えること。海外のMBAに関しては、住む場所を変えられるし、付き合う人も変えることができます。逆に、もともとMBAで得られるような視野の広さや経験がもともと備わっている人は、行く必要がないように感じますね。
今の仕事に疑問を感じている人や、現在の環境に燻っている人にとっては最適な環境と言えます。また、行くこと自体に価値を感じているようでは得られることも少ないので、費用対効果は良くありません。あくまで、あらゆることを貪欲に吸収し、何事にもチャレンジする姿勢が不可欠です。
-いやらしい話ですが、MBAホルダーになって得したと感じたことはありましたか?笑
もちろん、就職の際に足切りの対象から外れるということはありますが、それは大した問題ではないと思います。それよりも、世界中にあらゆるネットワークを持つことができることが強いと感じます。例えば、香港に同級生の友人がいて、それが中国のマーケットに繋がる絶好のチャンスになったりします。ただし、まずは自分自身が魅力的な人間にならないことには、良質なネットワーキングは期待できません。あくまで、自分を高める場としてMBAを活用しに行くべきですね。
トップスクールに行くと、やはり日本では出会えないような人間に出会えます。多様な価値観や海外の超優秀な人材、面白いバックグランドを持った人間に会うことができます。そう言った人と一緒に勉強していると自分も出来るんじゃないかって良い意味で勘違いするようになります笑。
-めちゃくちゃMBAに行きたくなりました笑。僕たちも、後悔のない、自分に合ったキャリアを一生懸命考えて行きたいと思います。本日はお忙しい中、ありがとうございました!最後に、一緒にお写真だけよろしいでしょうか…?
もちろんです。
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