BY NAT LEVY on
技術系大企業がサイバースペース安全確保の第一線をゆけ
銃撃戦に代わり、サイバースペースが私たちの世代の戦場となりつつあります。技術系企業と政府が一体となって激しいサイバー攻撃に応戦するべきだ、とジュネーブでの国連会議でスピーチをしたのはマイクロソフト社長兼最高法務責任者であるブラッド・スミス氏です。
スミス氏はテクノロジーが偉大な進歩へ貢献した一方で、どのように暴力や戦争へ駆り立てたかを歴史に沿って語りました。また第一次世界大戦後の技術主導型に注目し、第二次世界大戦にてその影響の縮小や技術規制に失敗した過程を説明しました。
サイバー攻撃を監視し、戦うことは従来の攻撃のそれよりも難しいでしょう。なぜならサイバー攻撃は、影に隠れた無名のハッカーが素早く侵入し、山火事のように広がっていくからです。
「現実としてサイバースペースにおけるテクノロジーは、陸上だけでなく水中や空気中など多くの場所で広がっています。では私たちが今見ているのは何か?新しい軍備拡大競争です。私たちは兵器が目に見えないという新時代に突入しています。サイバー兵器は、銃のように手に持つものや、軍用機やミサイルのように見渡せるものではありません。しかもその影響は根深いものなのです。」とスミス氏は言います。
彼によれば、今年だけでも歴史的なサイバー攻撃が何件も目撃されました。彼があげたのは5月に出現したWanna Cry(ランサムウェアの名前)による攻撃で、世界中150の国々の病院やビジネス、政府など20万台以上のコンピューターに被害をもたらしました。
Wanna Cry の攻撃は2017年をサイバー戦争にとって歴史的な年にしました。さらにはサイバー攻撃を受けたフランス首相の選挙や2016年のアメリカ大統領選、さらにウクライナでの広範囲攻撃も影響しています。
テクノロジーの進化に伴って、より多くのシステムがオンライン化され、脆弱性だけが増していくことでしょう。
「いまやサーモスタット(温度調節器)をハッキングすることができれば電力系統(電力を需要家の受電設備に供給するための、発電・変電・送電・配電を統合したシステム)を超えたところまでハッキングしうる世界なのです。」とスミス氏は言います。「私たちが突入した時代は、全ての温度調節器、全ての電気ヒーター、全てのエアコン、全ての発電装置、全ての医療機器、全ての道路信号、全ての自動車がインターネットに繋がった時代です。考えて見てください。全ての装置が攻撃の対象になった時、これが世界にとって何を意味するのか。」
ハッカーの標的は様々いるのにもかかわらず、多くのサイバー攻撃は未だに同じような形式で始まるとスミス氏は主張しています。コンピューター上で不正なリンクをクリックし、ハッカーへシステム侵入のドアを開けるといった具合です。スミス氏は働く人々の行動を変えることの重要性について述べていて、それは「全ての組織が少なくとも一人、そのリンクをクリックするだろう従業員を抱えているだろうから」です。
スミス氏はマイクロソフトが毎年10億ドルをセキュリティ革新のために費やしていると話しました。マイクロソフト、および追随する大企業には防御の最前線として働く責任があります。なぜなら「私たちがテクノロジーを作り上げたから」であり、「私たちが最初に脅威を見つけ、素早く対処する」ためだと述べています。彼が推奨しているのは世界のトップ企業が一堂に会して、人々をサイバー攻撃から守る共通の最善策を取り入れることです。さながら戦場での医者です。
しかし技術系企業ではサイバースペースを守り、監視しきることはできません。そこでスミス氏が繰り返したのは、彼が以前呼びかけた「デジタル・ジュネーブ条約」の必要性です。これは明示的にサイバー戦争を抑制しようとするもので、通常の戦争のための国際協定と同じ考え方です。
「世界は新しいデジタル・ジュネーブ条約を必要としています。新しい道には、新しいルールが不可欠です。」とスミス氏は言います。「私たちが必要としているのは政府によるアプローチで、平常時は一般人を攻撃せず、他国の政治プロセスへ干渉せず、サイバー兵器を民間企業の知的財産を盗む用途で使用しない、各国政府や民間部門間で協力してサイバー攻撃に立ち向かう姿勢なのです。」
(2017年10月26日 Geekwire 『Microsoft’s Brad Smith: Tech giants must be the first line of defense in cyberspace arms race』より全訳)
最高法務責任者
他にもCFO、COOなど色んな役職があるみたいです。気になった方は調べてみてくださいね!
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